Ⅰ.中国国家外国専家局訪問

中国国家外国専家局の法的な位置付けと所管の業務・実態について

1.はじめに

平成13年11月21日、東京税理士会国際部団員16名は、中華人民共和国国家外国専家局を訪問した。 午後4時から午後5時30分までの1時間30分にわたり、外国専 家局からは副局長の楊 漢炎氏、教科文衛専家司副司長 武雲茹氏、 教科文衛専家司 国際交流処処長 宮 燕明氏、教科文衛専家司日本交流処処長 袁 曉利氏、の各氏に出席していただき、 専家局の法的な位置付けと所管の業務・実態につき楊漢炎副局長から説明を受け、引き続き質疑応答が行われた。

2.中国国家外国専家局の中国政府における法的な位置付けと所管の業務・実態について

楊 漢炎 副局長 説明

「中国国家外国専家局を代表しまして、皆様のご来訪を歓迎致します。
専家局は、中国政府の役所として主に外国政府との交流を担当しております。 主な仕事は二つに区分され、一つは、中国経済の発展の為に外国の方々に中国に来ていただくこと、二つ目は中国の人々を、 マスコミとか役所の人とか会社の人とかを外国に派遣して外国の良いところを勉強することです。
当局は、中央政府の人民組織でありますので、中国各地方および中国各省の役所を対象にして業務を行っています。
業務の手順を申し上げますと、各地方、政府各省から毎年外国とどういう交流をしたいかという企画書を提出してもらって、そのプロジェクトを審査し、許可することがわれわれの仕事です。 それとともに中央政府の各省、例えば税務当局を含めて彼らの国際交流プロジェクトについても中央財政から資金の援助を受けサポートします。 そのために毎年外国から中国に来てもらう外国の方々の総人数は43万人になります。それに外国へ派遣する中国人の研修視察団は年間約4万人になります。 4万人の数というと多いと思われるかも知れませんが、中国の人口12億と比較すれば、まだまだ少ない方です。
先ほども申し上げましたように当局の業務の内容は、各地方の外国との人材交流の企画書を審査し許可することです。
それに中央政府の専門組織として、人材交流をすることにつき法律、規定、決まりなどを作って発表することもわれわれの仕事です。
それに、各地方の仕事を審査し許可してから、具体的にどういうふうに進めたかを監督する義務もあります。それによって各地方にどれくらいの資金提供をするかを決定します。
また、各国の政府部門、関連団体とのいろいろな打ち合わせを通して、合作交流の可能性を確かめることもあります。 場合によっては直接、外国の団体組織と契約することもあるし、それにいろいろな外国の組織が中国に来て、中国国内で人材交流をすることについての資格認定をすることも行っています。
専家局の組織は、主に三つの司という部門に分かれています。
まず一つは、文化、教育、衛生などを担当する教科文衛司、つまり今日在席している皆さんはここの担当部門に所属しています。
つまり主に中国のいろいろの大学、教育部門、出版関係のところに、中国の外国専門家の派遣を専門的に行っています。人数からいうと年間約一万五千人くらいです。
その他に経済技術担当の経済技術専家司があります。ここは主に政府の関連部門、国有企業の中で、技術の指導をする外国専門家部門です。
さらに専家局が外国に行って自ら選んで招聘する人もいるし、それに中国の設備のプロモーションビューローによって入って来る専門家もいます。
その中には、外国の合弁合作企業の中での技術担当、経営管理担当の人も含まれます。
その他先ほども申した通り、外国に研修生を派遣する部門、出国培訓管理司があります。つまり各地方の要請により、いろいろな外国に派遣する研修生の養成をします。 中に直接専家局が許可することもあるし、各地方が許可し、われわれの所に報告することもあります。
現在、直接専家局と契約して人材交流をしている外国の組織は、約180ヶ所あります。 その中に主に人材交流の合作に関する外国の組織は、約90ヶ所あります。具体的に言いますと、世界の約50カ国と人材交流を行っています。
それ以外に、このような人材交流のための法律規定をつくる法規與連絡司があります。 彼らの仕事は主に、人材交流に関連する法律規定を下書きすること、それに外国との人材交流をする時のいろいろな会議、シンポジウムを行っています。 長年以来中国は人材交流の仕事をいっそう拡げています。
外国とのこのような交流合作を通して、外国と進めている技術、経営管理の方法を中国に取り入れたり、中国の良い所も外国に紹介いたします。
つまり、このような国際人材交流活動を通じて、世界の50カ国以上の所とお互いの相互理解を深めたり、いろいろな外国国民との理解も深めていきます。
そのために中国政府と中国の国民は、非常に国際人材交流ということを大事にしています。
例えば、毎年のように国家指導者達は、外国人専門家の中の優れた先生方と直接会見し、激励を送ります。
さて、専家局の組織の下には、付属組織が、三つあります。
専家局に所属する組織といいますと、政府コミューンではないですけれど社団法人、財団法人の形をとりまして、専家局と緊密な関係を持ち、 専家局は自ら彼らの業務を指導して行っております。一つは中国国際人材交流協会、二つ目は中国国際人材交流基金会、財団法人です、三つ目は専家局研修センターです。
つまり市場経営の原則を守りまして、日常に人材交流を行います。
特に 中国国際人材交流協会は、外国との人材交流をより良く行なうために諸外国に事務所を設けております。例えば東京にもあります。 パンフレットに書いてありますが、アメリカとか、カナダとか、ドイツ、イギリス、オーストラリア、ロシア、シンガポール、韓国などです。これらは、我々人材交流の窓口でもあります。
現在、東京事務所の所長は、関さんという人です。よろしくお願いいたします。彼は、東京に勤務する前は、人材交流協会の事務局長を担当していました。何かありましたらぜひ相談に来てください。 中国の国際人材交流という仕事は、外国の方の協力がないとやれないということです。
特にいま中国は、経済改革を行っている最中なのですが、その中で金融対策、税務対策を含めて、非常に大事な分野であると思います。
ご存知のように、いままで中国は企画経済で政府の人間により経済を企画していましたが、市場経済に対しては弱い部分がありました。
これから市場経済を発展させる為に市場経済の原則ルールを守らないとやっていけないと思います。そのために我々としても各国の外国の専門家に来ていただきたいと思います。 もちろん、金融分野、財務、会計、税務関係の人をも外国へ派遣しています。この中で税務関係の外国人の専門家も、指導する為に中国に来ていただいています。
例えば、イギリスの税務関係、オーストラリア、香港特別行政区の税務関係の人ともいろいろな交流を計ってきました。 その中に向こうからもやって来ていただきましたし、それと共に、こちらからも研修生を派遣した実績もあります。
中国の財務関係税務関係にとって、これからWTOによって必ず世界のルールに合わせなければなりません。
そのため、より多く国際的な経営ルールや、税務関係のわかる人材に中国に来ていただきたい。残念ながら中国は、このような方面の人材が乏しいのです。
そのためどういう措置をとるかというと、まず大学の中に関連学部学科を設置して人材育成を図ること。もう一つは在職の関係者に研修を通して国際ルールの理解に努めること。
在職者の人材研修といいますと、もちろん中国国内で研修クラスを設けてやる場合もありますし、外国に派遣することもあります。
先ほども申しましたように、イギリス、オーストラリア、香港の税務関係の所です。研修生を派遣したこともあります。
すでに東京税理士会とは1994年から合意書を締結しておりますが、袁さんからも報告を受けまして、何年も前から皆さんと接触をしたいと思っておりました。
残念ながらこの機会がまだ少ない。今度の皆様のご来訪を通じまして、これからどんどんこのような交流を拡げたいと思っています。
今はタイミングとして非常に良い時期だと思います。ちょうど今中国はWTOに加盟して、中国と日本との経済交流も深まり、昨日も両国の中日経済シンポジウムも開かれました。 中国は広い市場があるといつも言われる通りですが、中国の税務関係、税理士関係分野についても、皆様のご協力と皆様の活躍を期待しています。
御清聴ありがとうございました。謝謝。」

中国国家外国専家局との質疑応答

1.資格の相互乗り入れについて、現在の状況についてお聞かせください。
(例えば外国人に対する資格の開放等について)

中国では、弁護士、会計士、税務師を含めて、資格は組織により認定されます。 弁護士と会計士の認定は、まったく別々に行われます。
例えば、会計士の認定は中国会計士協会という協会で、弁護士の資格認定は中国弁護士協会が行っており、別々な認定となっています。
これは中国の人事部という政府組織が権利を渡して、協会に任せて資格認定を許可しています。
それにWTO加盟によりまして、外国人の専門知識の方々、弁護士、会計士、税理士の方々が中国で仕事をするということが目の前に来ています。
しかし、この資格認定について、どの様にやるかは段階を踏んでやるようになります。
例えば、私が知っているケースでは、香港の会計士事務所は、すでに中国で仕事を始めています。 他の国でもほぼ同じような状況で、独特とでも言いますか、ITで中国に入ってきています。 市場経済により、アカウンティングは間違いなくやりますので、こういう問題もいずれ解決してくると思います。 国際ルールさえ守れば、東京税理士会の方々もいつか中国に進出することが出来ると思います。 もちろん、これは専家局ではなく、中国の国家税務総局が担当となりますが。 しかし、税務関係の外国の皆様が中国に、例えば技術指導でいらっしゃる場合には、専家局が許可することとなります… それに中国の税務師が外国に研修に行く場合に、政府の許可をもらうとしたら専家局の許可が必要となります。専家局の許可によりはじめて外国に行けます。

2.貴局が日本の税理士会に期待していることがありますか。またどんな専門家に実際に来てもらいたいかお聞かせください。

「まずお互いに緊密な友好関係を守ること。税理士だけではなく、WTO関係、金融関係の専門家にも来ていただきたい。 中国の税務師の日本での研修も受け入れていただきたい。もし良ければ1994年の合意書に基づいてもっと具体的なことを検討してもらえば良いと思います。 例えば毎年10名ほど高級専門家、レベルの高い専門家に中国に来ていただき中国で仕事をしていただきたい。
やり方というと、中国の大学に行って、税務関係の授業を講義する。1年でも良いし半年でも良い。 もう一つは、中国で税務関係の研究開発講座を設けて、授業を行なうこと。それに可能なら、中国の税務師の研究生20名ほど日本に派遣して、1週間とか15日とか1ヶ月とか研修させること。
現在、香港の会計士協会を通じて中国の会計士10名ほどをドイツの会計士事務所に 派遣しております。
それに向こうの会計士協会を通して、講師を派遣して、中国の行政機関ないし国民大学で講座を開いています。
つまり授業を上手にやれる専門家を我々が招聘し、中国の大学で教授として招聘します。 毎年のように定期的に、あるいは時間さえあれば、皆さんが中国の大学に行って研修生同士の交換をしてもよいと思います。中国のこの方面の授業はいろいろあります。
まず、相互理解を深めた上で、仕事がやりやすくなります。

3.2002年4月に西南政法大学・重慶市地方税務局が本会に来て勉強会をしたいとのことですが、貴局が窓口となる関係上、貴局を通して進める必要があるのかお聞かせください。

「私達が聞いたところ、こういう考え方があると思います。もちろん決まりましたら当局としましても協力致します。 とにかく現在、中国の税務関係の人が外国に派遣する研修が非常に多いということです。 もし、東京税理士会とも交流することに決まりましたら専家局としましても、協力したいと思います。 特に研修する形で行くことに決まりましたら、我々も関連規定によりまして出来るだけの協力をいたします。
しかしもし、ただ普通の視察の形で行くことにしたら、当局とはあまり関係はないです。」

4.米国の公認会計士協会等を含め、外国との協定の有無とその内容について お聞かせください。(もちろん東京税理士会とは協定していますが)

「アメリカの公認会計士協会と専家局とは直接協定はありませんが、中国会計士協会と協定があるかどうか。 おそらく、これから調べることになりますが、もしアメリカの公認会計士協会と中国の公認会計士協会と協定があれば、我々を通して東京税理士会に紹介してもよいと思います。 税務とは異なった分野ですが、中国の会計士協会ともいろいろ交流をはかってください。」
本レポートは、その様子を出来るだけ忠実に再現しようとした。また、本報告書の資料集に掲載した当専家局2000年年報の翻訳は、英文の内、必要と思われる部分の仮訳である。

(担当 山口 賢一)

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