HOME 税理士の方へ 国際部レポート 2001年 中国視察報告書 Ⅲ.中国税制・投資環境について

Ⅲ.中国税制・投資環境について

[2]波多野氏の講演内容  ~中国の投資環境~

(1)政治経済等の概要

①あらまし(図表-5)

中国の昨年末の人口は12億6,583万人である。これは昨年の秋に国勢調査を実施した結果であるが、調査するために600万人の調査員を動員したとのことである。それでも数千万人単位で誤差があるだろうといわれている。したがって、12億6,583万人という数字が昨年末の公定の数字である(台湾は除いた数字)。GDPは全体が1兆800億ドルで大体日本が4兆ドル位(円高のときは5兆ドル位、最近円安になってきたので4兆ドル)といわれているが、概ね、日本全体のGDPで四分の一、一人当たりGDPで855ドル、これは日本が一人当たり3万数千ドルということなので、50分の一か40分の一位というところで平均してみるとまだ発展途上国である。これは全体をならすとこういう数字になるというだけで、北京や上海と比較すると2千ドル~3千ドルとういことになるので、かなり発展途上国から脱してきている。特にみなさんが目にした所は高層ビルが建っているから、はっきり申し上げて先進国といってもおかしくない位の感じである。

②主要経済指標〈図表―6〉

最近の経済について、図表―6に主な経済指標があるが一番右は今年の1月から9月までの数字で、全体的な国民総生産で見ると昨年は一応8%成長、今年は1月から9月迄で7.6%ということで、若干落ちてきているが12月末では7%を若干上回ると予想される。しかし、世界の中で7%も8%も成長しているところは基本的にはほとんどありませんので、高度成長しているのは中国だけである。どういうものが伸びているか見てみると農業、第一次産業というのはもう比較的伸びない世界に入っていて、いわゆる工業、すなわち第二次産業が9.3、第三次産業が7.0ということでやはり工業、サービス業を中心として今経済発展が進んでいるといったような状況が見えてくる。それで、どんなものが引っ張っているかというと真中辺に、消費者小売総額というのがある。消費いわゆる日本で一般にいう消費支出のことであるがその支出がやはり毎年10%伸びている。その結果、次々に新しいショッピンセンターが出来、新しい飲食店が出来ということで、まさにその消費が急速に伸びている、毎年10%ずつ伸びている状況があり、日本のショッピングセンターなども北京ではイトーヨーカ堂が進出しているし、台湾に進出している、そごうが再進出という形でこちら北京にも出てきている。 都市住民と農村住民の実質収入というのを見ますと、これは平均値で書いてあるのでだいたいのイメージをご理解いただければと思うが、平均をとると毎年、都市では6%から7%という上昇をしている。これは先程、説明したように非常に二極化していて、普通のビジネスマンで、いわゆるホワイトカラーあるいは技術者等の方で都市部で戸籍を持って働いている人というのは結構、賃金は上がっている。何故、二極化するのかというと、中国では戸籍制度というのがまだ非常に厳しくて北京で生まれた人北京で生活が出来る。しかし、それが片田舎の例えばチベットで生まれた人が北京へ出てきて生活していかというと、まあ今は勝手に出て来る事は出来るけれども、基本的には住所を移すことが出来ない。チベットに住んでいる人は、いろいろ条件があって例えば大学を卒業してまともに就職をするとか、軍隊に入ってきちんと務めるとか、こういったことをやらないと戸籍が移せない。それで戸籍が移せないと昔は、食糧配給があったので10年程前までは、食料配給票がもらえないので食べられないという問題があったが、今は食糧配給票がなくなったので、生活は出来るが、農村住民としての戸籍では、年金とか社会保障を受けられないという問題がある。都市住民には年金や社会保障が受けられる社会保障制度があるが、農村というのはこれは社会保障制度対象外ということになっていて、基本的に都市の住民は1級品、農村の住民は2級品ということで農村の人に対しては社会保障を与えない仕組みになっている。都市が3億人、農村が10億人だとすると13億人のうちの3億人が一応政府として最低限の保障をする。そこで、こういった人達というのは一応の生活レベル可能な賃金を得ている。片や10億人の人達というのは優秀な人は大学を出て都市で生活することが出来るが、そうでない人というのは基本的に農村で生活せざるを得ないが、農村には当然職などありませんので出稼ぎにやってくる。出稼ぎにやって来た人達が例えば広東省にやって来て就職するわけであるが、この人達が基本的に国で決めた最低賃金で働いて、最低賃金をもらっても一生懸命お金を貯めて家に帰れば、一昔前だと三年間働いて建った家が、最近ではさすがに家は建たないと思うが、かなり貯蓄が出来て帰る。こういったことで大体2、3年でどんどん追い返されていく。 こういうローテーションが、いわゆる社会の二重構造が中国の政治システムの中に出来ているので、それによっていろいろな政策が行われている。だから先程賃金が上がっているかと質問があったが、いわゆる単純労働者を使って組み立てだけやるといったことでは賃金はまったく上がらない。ただ知的な労働で非常にいい物を作ろうと、例えば北京で優秀な技術者を雇おうと思うと、これは日本とほとんど変わらないくらい値段は高くないと雇えない。だから平均賃金が北京でだいたい月千元。もう少し多いかと思うがまあだいたい1万5千円とか2万円という額を払うと一人雇えるが、これは普通の人の話で、大学の技術系を経て、いわゆる今流行のITの非常に特殊な技能を持っている人を大学あるいは大学院卒で採用すると、基本的に月給1万元即ち15万円位は必要である。1万元出してもどんどん辞めて他に職を求めている。そういう人達は、少し長く続いている人で2万元~3万元、即ち、30万円~45万円という月給をもらっている人たちがたくさんいる。やはりこのきれいな町のきれいなレストランで恋人と語らってご飯を食べる、こういうことで前述の高度消費が図られている、そういうような状況がある。平均すると7%、6%と伸びている。一方で最低賃金が少しずつ上がっているので、まあ1%、2%位しか上がってない世界と毎年10%、20%上がっている世界が一つの国の中にある。 それから貿易も、世界的に今年に入ってから極めて景気が後退してるので、例えば、日本の場合、既に今年の1月から9月までの数字を見るとマイナスになっているが、中国はまだ頑張っている。だいたい輸入も10%前後の数字、これは相当世界の中でも突出して輸出入が今でも増加している。相当落ちてきているので来年位になるとプラマイゼロ位という予想もあるが今のところ、まだ輸出入共、相当がんばっているという感じである。この資料では1999年から2000年の伸び率が非常に大きな区切りになっているが、これは一つに中国経済が好況だったというのと、もう一つには朱鎔基が、ここ1、2年非常に厳しい税関の汚職の取り締まりをした結果といわれている。もともと税関という所は汚職のはびこる所で、ここでお目こぼしをしてやって税金を払わない代わりに賄賂をとるというのが一般的にあったが、相当大勢逮捕され、相当大勢死刑になったため、当初の税関が厳しく真面目に税金をとるようになった、従って輸出入の数字が若干やはり多すぎるなという感じがある。これは、去年・一昨年あたりで、今、去年あたりから厳しいのはずっと続いているので、厳しく監督するから増えているという部分がなくなっている。したがって、今の数字は実態にあった数字といえると思う。 あと中国で特徴的なことは、外貨準備が非常に大きいということである。すでに9月末で1,958億ドルとなっているが、現在2,000億ドルを超えたので、世界で1位が日本、2位が中国ではないかと思う。いまのところ世界のお金が中国に集っているという感じである。

(2)WTO加盟により投資環境はどう変わるか

①WTO加盟実現までの経緯

WTOに加盟するまで中国がやってきた経緯について述べる。先ず、WTOは、元はGATT即ち「関税及び貿易に関する一般協定」で関税を安くして貿易を進めましょうという組織だったが、これが戦後1947年にできて、そのときはもともと中華民国としてメンバーに入っていたが、そのあと内戦がおきて、蒋介石が台湾に追われた時に、蒋介石が1950年にやめたと宣言して脱退してしまった。1986年になって今度は中華人民共和国(今の中国)が、蒋介石は勝手にやめたけれど、もともとメンバーだったのだからGATTに戻りたいと復帰交渉を始めたというのが歴史的事実である。1986年にGATTに戻りたいと交渉を始めたが、交渉がなかなか進まず、ガットという組織が1995年にWTOという組織に変わり、1995年以降はWTO(世界貿易機関)に加盟したいと交渉を始めた。WTOに入る為にはどうするかというと、日本が1955年にGATTに入ったときと同じで、もともと入っていた人たちが皆でOK と言わなければ入れない。新しく入ってくる国に条件を出してそれがOKの場合に入れてもらえる。 例えば、中国が貿易についていろいろ設けている制限をやめたら入れてあげるということで、ずうっと交渉をしてきた訳である。例えば,関税が高いのでいくらまで下げたら入れてあげるとか、あるいは、自動車の投資を認めないから認めたら入れてあげるとか、最近はサービスの分野も入っているので、銀行が参入ができるようにしたら認めてあげるとか、保険会社を参入できたら認めてあげるとか、或いは、サービスの場合だと、ありとあらゆるものが入っているので、弁護士、税理士等々の場合も様々な条件を出し、それを15年間交渉し続けてきて、ようやく今年の11月にまとまった。具体的には11月11日にカタールのドーハの会議で承認されたので30日経過後加盟できる。正式には、12月11日に中国はWTOに加盟できることになった。

②WTO加盟による経済。貿易制度の変更

加盟に当たってアメリカも日本もEUもいろいろの条件を出したが、その約束書は、英文の書面で100数十ページになっている。今後中国はその約束を果たしていかなければならない。中国が約束したことはどんなことかを簡単にまとめる。

イ.経済政策

まず最初に経済政策の関係で、①法律や手続きが国と地方で統一されていないなどの不満があったが、統一的に行政をやってもらう。②貿易に関する法律や規則を公開してもらう。透明制を確保してもらう。中国の場合、内部通達はあるが、なんだか良く分からないということがあったが、そういうことは今後やめてもらい、きちんと公表してもらう。今後は、中国政府に問い合わせ窓口を作ってもらい問い合わせをしたらきちんと答えてもらう。行政手続きでなかなか認可が出ないという場合も行政が正しいかどうか文句を言う部署を設けてもらう。最近はなくなってきているが、中国人と外国人を差別的に扱う、例えば、つい最近まで、列車に乗った場合中国人料金と外国人料金が違っているとか、あるいは飛行機も外国人料金と中国人料金が違っていたというのが2~3年前まであった。今は、もうなくなっているが、一応確認的にWTOに入ったからには、外国企業や個人に対して、物やサービスを提供する際に、外国人だから高くするというような差別があってはならないと約束させている。もともと共産主義だから価格統制が非常に多かったが、価格統制も基本的には撤廃してもらう、今後、中国が価格統制についてどんなものを残すかを個別に列挙してもらって、タバコ、塩とか、こういったガス料金、電気料金については中国政府として、価格統制をしてもらっても構わない。ただ、列挙したもの以外の価格統制はやめて、自由競争にしてほしいということを約束した。

ロ.貿易制度

まず最初に経済政策の関係で、①法律や手続きが国と地方で統一されていないなどの不満があったが、統一的に行政をやってもらう。②貿易に関する法律や規則を公開してもらう。透明制を確保してもらう。中国の場合、内部通達はあるが、なんだか良く分からないということがあったが、そういうことは今後やめてもらい、きちんと公表してもらう。今後は、中国政府に問い合わせ窓口を作ってもらい問い合わせをしたらきちんと答えてもらう。行政手続きでなかなか認可が出ないという場合も行政が正しいかどうか文句を言う部署を設けてもらう。最近はなくなってきているが、中国人と外国人を差別的に扱う、例えば、つい最近まで、列車に乗った場合中国人料金と外国人料金が違っているとか、あるいは飛行機も外国人料金と中国人料金が違っていたというのが2~3年前まであった。今は、もうなくなっているが、一応確認的にWTOに入ったからには、外国企業や個人に対して、物やサービスを提供する際に、外国人だから高くするというような差別があってはならないと約束させている。もともと共産主義だから価格統制が非常に多かったが、価格統制も基本的には撤廃してもらう、今後、中国が価格統制についてどんなものを残すかを個別に列挙してもらって、タバコ、塩とか、こういったガス料金、電気料金については中国政府として、価格統制をしてもらっても構わない。ただ、列挙したもの以外の価格統制はやめて、自由競争にしてほしいということを約束した。

○貿易権
この分野は一番制限されていた部分で、基本的にもともと外国企業は勝手に貿易をしてはいけない、もちろん、中国国内の企業もそうだが勝手に貿易してはいけない。例えてみるならば、日本の徳川時代のようなものである。中国政府が恩典を与えた人だけが貿易をして良いということになっている。中国は中国政府の許可がなければ勝手に貿易をしてはならないことになっている。基本的には外資系企業は貿易をしてはいけない。唯一の例外としては、中国に工場を作って、その工場で使うものを日本から輸入して、工場が出来た製品を外国に輸出する場合だけは貿易をしてもよい。それ以外は自分で貿易をしてはいけないから、中国での貿易を認められている企業に委託をしてやってください。それが基本的な制度になっていて、これは、加盟したら3年以内には全部止めることになっている。1年経ったら外資系企業でも、外資が50%未満いわゆる外資の割合がマイノリティであればやってもよい。2年経ったらマジョリティでもやってよい。3年経ったら100%外資いわゆる独資でもやってよいとの約束をした。あと残っているのは個人である。日本では、個人輸入はできるが、中国ではいろんな交渉があって、途中の段階ではやってもいいとのことであったが、結局個人には輸出入権は与えないことになった。WTOに入った後でも、個人輸入は認められない。外国から物を買って、事実上郵便で配達されてきたらできるが、基本的には会社を作って会社の名義で許可を取らない限り貿易はしてはいけないことなっている。この部分はWTOに入った後も変わらない。

○関税削減
関税は下げるというのが、今回約束した大きなことである。たとえば乗用車だと今70~80%の関税がかかっている。その他日中間で貿易摩擦問題が発生していて、もともと70~80%の関税に特別関税で100%かけられていて、基本的に中国には車の輸入が出来ないようになっている。貿易摩擦が終われば、元に戻るはずである。現在の70~80%の関税を2006年の7月までには25%まで下げるということになっている。今、非常に高いので、ホンダが広州でアコードを作っているが、日本で買えば200万円ちょっと〈220万~230万〉位のものが、30万元即ち、450万円で中国で売っている。450万円でも飛ぶように売れている。半年前に予約をしないと今は買えない。関税が高いが為に中国で作った車はものすごく高い価格で売られている。それが5年後には25%まで下がる。中国で作った車と日本から輸入した車とでかなり競争が厳しくなってくる。この1~2年人気のない車は、だいぶ値段が下がってきている。ホンダのアコードは人気があるのでそんなに下がっていないが、上海でフォルクスワーゲンがサンタナを作っているが、これは人気が無いのでこの1年間で2~3割下がっている。関税が下がることで貿易にも影響がでてくる。

○貿易関連投資措置
貿易関連投資措置といって、貿易に関連して投資を認可するときに、こういうことを条件づけてはいけないというWTOにあるルールであるが、何をしてはいけないかというと、例えば、ローカルコンセントというのは投資をして工場を作ったら工場の部品を外国から輸入して作ってはいけません。何割かは国内で調達するように。あるいは工場で作ったものの半分以上は輸出して下さい。あるいは投資を認可するにあたって技術移転をして下さい。研究開発を中国でやって下さい。こういった条件は今までも一杯ついていたが、このようなことを中国政府としては今後一切要求しないと約束した。もともと中国の外資認可の法律というのがあるが、こういった法律にも認可された企業は、なるべく国内のものを調達することとか今まで条文にいっぱい書いてあったけれど、一応今年法律改正されて、WTOにそぐわない条文については、全部廃止されている。ただもちろん商売の話なので、合弁を作ろうとしたときに、合弁の相手先の企業が私のところに技術移転してくれないと合弁しないというのは、別の話で自由である。それを中国政府として強制はしない。それが今回変わったところである。先程の話でたとえば、自動車の生産の許可をとると、今はホンダが広州でアコードの生産は許可されているが、アコード以外のものを作るには、新たに中国政府の許可が必要になる。これはWTOに入って2年たったらやめる事になった。工場の許可は必要になるが、許可をとったら何を作ろうと構わないことになる。ただし、リミットはあって、大型のバスやトラック・商用車・乗用車等3分類ぐらいに分けて、3分類のひとつの許可がとれれば、その中では何を作ってもよいことになる。もう一つ、投資の認可という問題がある。基本的には3,000万ドル、日本円にして36億円よりも少ない投資であれば、各地方政府で認可をする。つまり北京市とか上海市とか広東省とかで認可をして構わない。そして3,000万ドルを超える場合は、中国の中央政府の認可をもらわなければならない。これが基本的な原則である。自動車については3,000万ドルが加盟して1年たったら6,000万ドル・2年たったら9,000万ドル・4年たったら1億5千万ドルとこのように地方政府で認可を出して良いようにすると約束されている。

○経過的セーフガード(対中特別セーフガード)
中国がWTOに入ってくると、もの凄く、中国からいろいろなものが日本とかいろいろな国に入ってきて大変ではないかと懸念されている。特にヨーロッパやアメリカが警戒をして、セーフガードというのは大変話題になっているが緊急的にたくさん輸出が出てきたときには、一時的に輸入を制限しても良いという制度であり、一般的には制度があるが、特別に中国向けには、緩やかに制限ができるように特別に規定が盛り込まれている。中国が加盟した後12年間は、中国の産品が突如輸入急増したときには、基本的に2年ないし3年の間は、特別に輸入を止めることができるというものである。

ハ.サービス貿易

○基本的電気通信
今申し上げたのは、貿易の話で、WTOは物の貿易だけでなくサービスの分野もかなりいろいろなものについてある。すなわち、中国もいろいろなものを解放していくという約束があって、1つには.基本電気通信。NTT/KDD/DOCOMOとか、こういうようなものについて、基本的に今のところは外資に開放してないが、今後、除々に外資に何%とか基準が決まっていて、あるいはこの町なら良いとかと外資に開放してゆくとの約束ができている。

○卸売り〈除く:塩、タバコ〉・小売り(除く:タバコ)
卸売りとか小売とか既に認可を得ているものもあるが、このようなものも認可していく。

○損害保険
よく話題になっているのが、保険会社である。損害保険と生命保険は別だが、損害保険については加盟したあとに上海・広州・大連・深せん・仏山(広東省の町の名前)で支店を作るとか、あるいは50%以下での合弁を基本的に認めるようにしている。そして2年経ったら、北京・成都とかで認める。そして3年経ったらどこでもできるように、というのが基本的に約束されている。ただもちろんこれは、認可を受けられるということで、WTOに加盟した日に、外資系企業が、保険監督委員会という役所へ申請書を提出すればすぐに認可を得られるというものではない。受け付けてはくれるだろうが、そこから内容について審査が始まるということである。基本的に日本に、昔の大蔵省の銀行局に保険会社を新しくを作りたいといって、外国企業がやってきて、その日に認可がでるかというとそんなものではなく1年・2年と時間がかかることと同じことである。受け付けてくれるようになるといった程度である。

○銀行
既にいろいろな銀行が中国に出てきており、外貨取引はいろいろな町で許可が出て既にやっている。やっぱり儲かるのは、人民元取引。中国の人を相手に取引をするということを始めないとなかなか儲からない。人民元取引というのがWTOに加盟した後で、除々に解放されていくことになっている。

ニ.経過的レビューシステム

このような約束をいろいろな国がいってきたことをまとめると英語で100数十ページになる。分厚い資料としてできている。ただ中国が、WTOに入って直ぐにこれが守られていくとはだれも思っていないので、加盟したあとチェックしていかなくてはならない。中国が加盟した後8年間毎年1回、ジュネーブに集って約束を守っているかどうかをチェックする。これを経過的レビューシステムという。

③WTO加盟の中国経済への影響

イ.プラスの側面

○貿易面
WTOに入ると中国にとってどんな良いこと、悪い事があるのかというと、簡単にいうと、中国にとって良い面は、例えば、WTOに入る前は、繊維製品が中心だがアメリカとかヨーロッパから非常に厳しい、中国の製品に対する差別的な輸入制限措置が実はたくさんあった。日本はやっていないがアメリカとかヨーロッパはたくさんやっていて、こういった差別的措置はWTOに入った後で廃止されていくことになっているので、したがってアメリカとかヨーロッパ向けの輸出が中国としては大分増えるのではないかと期待されている。ただ急に増えると困るというので先ほど申しあげたようなセーフガードといった、一時的に中国からの輸入を止めるといったような措置が併せて規定されている。それから中国で関税が引き下げられているので、中国の企業でいろいろな原材料とか部品を、外国から輸入して、中国で組み立てて、外国へまた輸出している企業は、部品にかかる関税が下がるので、製品の価格も下がり、メリットがあるのではといわれている。

○投資面
自動車とか流通・銀行・保険の分野では、従来非常に厳しい規制をしてきたが、ここを解放すればお金が入ってくる。投資金が入ってくるので、中国経済としてはプラスである。あと、中国の政府としては、昔の日本政府と一緒であるが、国際約束をしたからキチンと対外開放をしないといけないということで、国際約束をもとに国内経済制度を改革していくことが、今後中国政府としてできることになるので、WTOの協定に従って中国国内の規制緩和も行われることとなるというメリットが生まれる。

ロ.マイナスの側面

○貿易面
一方、悪いところは。関税を下げるので、かなりの輸入車が入ってくるので、従来保護されていた、自動車・鉄鋼・化学農産品等はかなり厳しい局面にたたされるのではないかといわれている。

○投資
投資ができることになると、銀行・保険等は、外資がどんどん入ってきて、中国のもともとの企業はそんなに競争力があるわけではないので、戦いに負けていくということが考えられるため、こういった分野で厳しい事が有るのではないかと云われている。

ハ.総合的評価

全般的にいうと、優秀な人材があれば、一時的に厳しくても、競争の中で立派な国を作っていくのではないかと一般的には言われている。

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