HOME 税理士の方へ 国際部レポート 2001年 中国視察報告書 Ⅴ.注冊税務師管理中心と中国税務諮詢協会

Ⅴ.注冊税務師管理中心と中国税務諮詢協会

1.はじめに

午前中の国家税務総局国際税務司に引き続き、国家税務総局注冊税務師管理中心、中国税務諮詢協会を訪問した。中国からは趙懐坦主任他4名が出席した。
東京税理士会国際部は、中国税務諮詢協会の訪問に当たり、事前に1996年11月に中華人民共和国人事部・国家税務総局が発令した「注冊税務師資格制度における暫定規定」に基づき、ある程度予備知識を得た上で事前に質問書を税務諮詢協会に送付した。11月23日当日は、その質問書に沿って回答があり、質疑応答を行った。以下、その内容を要約し、報告する。

2.資格取得制度

注冊税務師管理中心とは、日本でいえば国税庁税理士係とほぼ同じ業務を所掌している役所である。即ち、注冊税務師制度に対する政策の企画立案、同試験の実施、税務師の登録および管理監督を行うことを主たる業務としている。
注冊とは登録の事を言い。国家統一試験(考試)実施後合格者が国に登録つまり注冊をして「注冊税務師」となる。

(1)注冊税務師試験制度に関して

①試験について(回答者:趙懐坦主任)

試験は毎年6月に中国全土統一問題で行われ今年で4回実施された。1998年の第1回試験は地方に設立されている税務代理機構の事業者を対象とした受験者を制限した限定的なものであった。それは、制度改革の年でもあり過渡期的処置であったためである。2回目の試験からは受験資格のあるものは誰でも受験できるよう門戸を開放した。合格者数は、第1回の1998年は約26,600名、オープン制となった1999年以降は次の通りである。

1999年 約5,100名
2000年 約8,200名
2001年 約8,700名

合格者累計は現在まで約48,600名である。
合格者のうち12,000名は注冊税務師事務所に勤務しており、残りの36,600名は税務局の現役役人、民間企業の者と注冊会計師事務所に勤務している。合格者のうち、OBの数は明らかにできないが36,600名の半数は専門家である。
試験は筆記試験で行われかなり難しい、特に今年の試験は国家試験としては大変難しいものであった。
合格率は次のようである。

1999年 10.4%
2001年 14.8%

合格率は中国の注冊会計師とほぼ同じく約15%弱で推移している。

②試験科目について

試験方法は2種類に区分され1つは、試験科目が5科目で次のとおりである。

  1. 税法1 : 流通税
  2. 税法2 : 所得税、地方税
  3. 税収関連法律(金融法、民政法が含まれる)
  4. 財務と会計
  5. 税務代理業法関連項目

合格科目の有効期間は2年で5科目すべてを連続する2年以内にとらないと国家資格は付与されないことになる。
2つめは2科目受験によるもので、ハイレベルの資格を有する高級会計師か高級経済師が受験有資格者となる。試験科目は

  1. 税務代理業法関連項目
  2. 税収関連法

で、有効期間は1年である。

中国の徴収税制の改革に伴って、中国マーケットの中で企業の税務専門家に対する需要は段々と増えているが、まだ納税者の10%が税務師の仲介で申告している程度であり、中国の税務師のマーケットはまだまだ開拓発展の余地があると思われる。
これからも、税務師試験制度を種々検討し、合格基準は厳しく守り、試験の信頼性と資格の質の向上を図りつつ毎年数千人単位で合格者を増やす予定である。

③受験資格について

中国の税務代理師の歴史ははじまって未だ浅いので受験国籍は中国人に限定しているので、マカオ、香港、台湾籍の者、その他の外国人の受験は認めていない。しかし、WTO加盟後は、いずれ外国人にも受験の機会を開放しなければならなくなるので、マカオ、香港等から順次受験の機会を広げていくようである。
経歴については、学歴は短大卒以上のレベルのある者、実務経験は経済分野での経験が一定年数以上の者となっている。それは資格の資質を保持するためである。注冊会計師は大学在学中でも受験できるので、この点では注冊税務師とは違っている。注冊会計師の受験資格は、現在は香港、マカオ籍の人にも開放されている。
博士課程修了者等の高学歴者に対する試験科目の免除等の優遇規定はない。

(2)他の資格との関連について

中国では税務代理業務に従事することができる者は、注冊税務師の資格が必要で、注冊会計師が税務代理業務を行うにも注冊税務師の資格が必要となり、注冊会計師の不満の種となっている。注冊会計師が注冊税務師の資格を取るのに易しい試験等の特例はなく、現在、注冊会計師協会とこの点について協議中である。それぞれ、試験科目は5科目で、税法と財務会計は共通の試験科目なので、この科目を免除できるか検討中である。

3.資格の維持、更新および会則等(回答者:顧小波副主任)

(1)資格の維持および更新について

注冊税務師の資格を得た者は、税務師管理法の規定によりその資格を登録することにより、登録税務代理人執務資格証書を取得し、税務代理活動をすることができる。登録有効期間は3年で注冊税務師の業務レベルを維持保証するために毎年72時間以上の教育研修に参加する義務がある。研修内容は、改正税法と財務、国内外の経済動向、税務代理業務に従事するに必要な知識、例えば、コンピュータとかインターネットなどについてである。
事務所の所長クラスは、会社管理、市場開発等について、また、今年は新徴収法を中心とし、WTO加盟後の改正税法について研修している。
また、再教育を受けた注冊税務師に対して年度監査を実施し、管理規定に違反して再教育を受けていない者、1年間に国の法律に違反して大きなミスを犯した者は、翌年の登録手続きを受けられないことになる。
年度監査と登録、人事権は各地の管理中心と登録センターが管理している。

(2)会費について

法人会員、個人会員ともに会費は一切徴収していないが、将来、会費を徴収するかどうか検討事項である。
「中国税務諮詢協会規定」10条には会員が協会に会費を納付する義務が定められており、注冊税務師協会となる近い将来、間違いなく会費を徴収する事になると思われる。日本の税理士会の会費について質問があり団長が具体的に回答した。

(3)中国税務諮詢協会について(回答者:劉文彬副会長)

中国税務諮詢協会は1995年2月29日設立された。当時は、未だ注冊税務師の試験はなく従ってその資格も存在しなかった。いずれ諮詢協会は中国注冊税務師協会と名称変更することになる。中国の18省は税務諮詢協会から注冊税務師協会に名称変更しているが、業務内容、役割等は従前どおりであるので、94年に締結した東京税理士会との友好協定の内容は変更する必要はない。

①諮詢協会の組織と構成

中国税務諮詢協会は中国民生部の許可を得て設立された1級社会団体で中国税務諮詢代理者で構成する。協会の役員の任期は4年で、会長、副会長4名、顧問4名で構成する。協会は全国35の省すべてに今年末までに支部機構を設立させることを最重要な目標としているが、今のところ、18支部機構が設立されている。支部機構には個人会員と法人会員がいる。各税務代理機構は諮詢協会の法人会員となる。税務師有資格者は個人会員となる。会員はそれぞれ、権利の享受と義務の履行を求められる。つまり、会費を払うことである。個人会員については、代理業務に従事の有無により会費に差をつけるか検討中である。法人会員については、収入の一定割合を会費として徴収する予定であるが現在は未だ未定である。
この方法は注冊会計師協会が採用しているので参考にする方向で検討している。 協会が会費なしで運営できる理由は主に次の3つである。

  1. 共通経費は主管官庁が負担していること。その理由は、当協会の最初の設立目的は役所の補助機構として役割の一部を分担するからである。
  2. 各地方の代理機構と会社関連機構が費用を負担しているからである。
  3. 協会自身が行う研修、出版物の販売等の事業収入があるからである。
②綱紀について

登録会員の会則違反については2つの場合に分けて考えたほうが適当である。1つは会員の研修不参加、地域外営業、会費未納などは重い処分の対象であり、除名処分もある。国家法律に違反した場合は国が処分権を持ち、刑事責任を追及される可能性もある。
2つ目は一般的な会則違反は専門の税務代理機構の管理中心で処分することになる。これらの処分権限は将来的に中国税務師協会に移管される可能性がある。

4.税務代理機構(税務代理会社/税理士法人)制度(回答者:顧小波副主任)

中国における税務代理機構は、現在「注冊税務師事務所」という名称で統一され、これは法人としての組織である。

(1)注冊税務師法人

①法人の組織・会員制度

「注冊税務師事務所」と呼ばれる税務代理機構には2種類ある。まず一つは、5名以上の注冊税務師が有限責任公司として法人(日本で言う株式会社)を形成した事務所、今一つは、2名以上の注冊税務師が無限責任として集まったグループから成る事務所、つまり「パートナーシップ」である。
全体の構成は、有限公司が約82.7%、残りがパートナーシップである。いずれにしても、一人では業務を行う事は出来ず、税務代理の契約は全て法人としての事務所が行う事になっている。公務員の中にも注冊税務師資格を有する者があるが、当然公職にあるまま税務代理行為を行う事は出来ない。
税務諮詢協会には、個人会員制度と法人会員制度の規定があり、それぞれについて権利と義務を定めている。個々の権利と義務の内容については「中国税務諮詢協会規定」(巻末の資料)を参照されたい。

②寡占化について

日本では、税理士法人制度が施行されると、巨大事務所が出現し寡占化が起きる。つまり業務規模の2極分化が進むと危惧されている。
中国では注冊税務師事務所は殆ど法人でスタートしている訳であるが、中国においてもこうした寡占化は少しは、あるいはいずれは起こるであろうと考えられている。ただし、現在全ての納税者(殆ど法人)の内、税務代理機構を経由して申告等を行う割合がまだ10%であるという現実を考慮し、注冊税務師事務所が2,000以上ある実体を加味すると、直ちに顕著な形で寡占化が進むとは考えられていない。事務所の規模が拡大してゆく過程として事務所同士の合併があるが、合併する事により注冊税務師事務所の業務品質がより高いレベルになるのであれば、むしろ歓迎する傾向である。大型事務所と、町の小さな事務所が両方存在して全ての納税者に対応出来ると考えられている。合併まで行かずとも、事務所同士の業務提携程度の結びつきは増えていくものと思われる。

5.標準報酬(回答者:張暁平処長)

現行の「注冊税務師資格制度」(旧「登録税務代理人資格制度における暫定規定」…日本の税理士法に相当する。)24条では、注冊税務師事務所の報酬について「国家統一の標準により代理報酬を請求することができる」とされている。この規定は1996年に制定されたもので、この中で国家統一の標準報酬について定めるに当たっては、これからスタートする注冊税務師制度の報酬に関して何らかの拠り所があるべきだとする当時の時代的要請があった。
1997年より各地方の税務代理機構の業務内容について調査を行った結果、全中国に一つの標準報酬では無理があるとの結論に至り、各地域の経済発展状況を考慮したうえで地域ごとに標準を定めるべきであるとして、国家税務総局は2370号令を公布した。この内容は、注冊税務師事務所の仲介・代理報酬として「政府指導価格」を定めるとしたものである。
中国は現在市場経済となっているが、価格上の問題に対しては指導の役割を担うため政府干渉が行われている。税務代理の報酬についても、省,自治区,市のレベルにおいて各地の価格主管部門及び税務部門と協議し、標準報酬と調整幅(標準に対し許容される上下限の範囲)が決められる事とされた。各注冊税務師事務所では、この範囲内に収まるよう、業務コスト+利益の計算を行い、事務所単位で標準報酬を定めている。巻末に、ある注冊税務師事務所の「税務代理事項及び費用標準」を掲載するので参照されたい。
税務諮詢協会では、将来次の段階としてこれら標準と範囲をすべてなくし、完全な自由競争にして行きたいと希望している。

(担当 青木優幸・志賀暎功)

<資料>

  1. 注冊税務師資格制度
  2. 中国税務諮詢協会規定
  3. 税務代理事項及び費用標準
  4. 国家税務総局発令通達
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