Ⅱ.米国における税務業務

1.EAの沿革

(1)授権法 The Enabling Act

南北戦争後、米国政府は当時国民にとって重要な財産であった馬等の、戦争で失った損失資産の請求権を認める法律を施行しました。しかしながら、その中には不正請求が多くみられ,失われた馬以上の請求があったようです。そこで、その請求を行う代理人の資格と罰則を定めた法律Enabling Actが1884年に施行されました。この中の代理人がAgents、Attorneysと表記されており、これが語源とされています。

(2) 財務省通牒230号 Treasury Department Circular No.230

1941年財務省通牒230号が施行され、IRS(米国内国歳入庁)に対して税務業務を行う上での要件,規則,罰則等が定められました。現在では、この法律により米国の税務業務に関する 運用がなされています。

① 誰が開業できるのか

米国において、誰が税務業を開業できるのかについては、財務省通牒230号にその規定がある。  財務省通牒230号§10.3に

  1. 弁護士
  2. 公認会計士
  3. EA
  4. 登録年金数理士
  5. その他
  6. 政府職員及び一般職員、その他
  7. 州の職員及び一般職員が開業のための登録をIRSに申請すればよいことになっている。
  8. その他

つまり、§10.5(c)もしくは§10.7の規定をクリアする個人は誰でも,それらのセクションで規定される範囲内で内国歳入庁に対し業務を行うことができる。
日本では、税理士法により有償無償を問わず税理士の独占業務となっている税務申告,税務代理が、米国では何の資格も無くて、開業登録を申請することで可能となっています。このことは米国の申告制度の違いによる申告件数(約1億5千件と言われている)の多さ と無関係ではないであろう。

② EAには強制入会制度はない

米国では、日本でいわれるような税理士制度はないので、EAの資格で開業している人た ちもEA協会に入会するか否かは任意なのです。EAの登録数は全米で約3.5万と言われていますが、全米EA協会National Association  of EnrolledAgents の加入者は約1万人、カリフォルニアEA協会の加入者は約3千人といわれています。双方に加入している者、また一方のみ加入している者、また全くどちら にも加入していない者様々なようです。

③ 継続研修72時間

IRSに対する登録の更新は3年ごとに行わなければなりません。§10.6(e)更新のための条件,専門教育の継続
登録の更新を得るために、内国歳入庁に対して開業登録をした個人は、監督官によって定められた更新申請書を持って,以下の継続する専門教育条件を満足させたことを証明しなければならない。
※(2)1990年4月1日発効と以後3年毎の登録更新者に対して

  1. 1987年2月1日から1990年1月31日の間に最低72時間の継続教育クレジットを消化していなければならない。以後3年毎にも適用される。3年の期間とは登録の期間である。
  2. 登録期間中の1年ごとに最低16時間の継続教育クレジットが必要である。

(以下省略)
※参考資料「米国税理士」から抜粋

開業登録者は、3年毎の登録更新をしなければならず、それには72時間の継続研修と年 最低16時間の研修が必須とされています

(中森 孝 担当)

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