Ⅳ.さまざまなEA
1.EAの現状
米国におけるEAという資格は先にも述べたように、まだまだ社会的認知度が低いようで、そのためか、若者はEAにほとんど興味がなく、弁護士やCPAを目指すように大学生が在学中からEAになるために勉強するということはないとのことです。したがって、実際にEAになっている人達はどういう人かと言えば、IRSの退職者か、中年になってから、こういった仕事に就こうと考えての転職者がほとんどであるとのお話でした。IRS退職者の場合は、25年間IRSに勤めると年金が支給されるため、50才近くでIRSを退職し、EAの登録をして、年金を貰いながら、確定申告期だけ仕事をするというパターンが多かったということです。しかし、この10年も続く好景気のおかげで税務に対する需要が増え、ファイナンシャルプランへの関心も増しているので、EAの中でも、FPや資産対策を手がけて年間を通して業務を行う動きも出てきています。事業者の記帳代行(Book Keeping)や給料計算を年間通して業務として行っているEAもいます。カリフォルニアは全米で最もEAの活動が活発な地域ですが、それはカリフォルニアには資産家が多いため、EAに対するの需要があるからだとの話には納得させられました。
① 確定申告業務だけではなく、相続や資産対策も手がけている現カリフォルニアEA 協会会長 Sal Romo 氏の場合
20社の財務諸表を毎月作っており、給与計算の受託も毎月行っているそうです。相続税の申告や信託・財産管理といった仕事も行っており、顧客としては100人しかいないけれども、複雑な業務を行っているので、1年中忙しく、弁護士と一緒に仕事を行うことも 多いそうです。また、ワンストップサービスを心がけているので、CPAや弁護士を顧客に紹介もするそうですが、彼の場合にはその際、紹介手数料は取らず、互いに顧客の紹介をし合うようにし ているということです。報酬については、毎月の関与について毎月定額にしており、報酬の決め方としては、6ヶ月間は概算で固定報酬を請求し、6ヶ月後に見直すということにしていると言われていました。コンサルタント業務についてはタイムチャージで請求し、IRSの調査立会いについては高い報酬を請求しているとのことです。
② 税務申告を中心とする業務を行っている現カリフォルニアEA協会副会長 Jim Southward氏の場合
事務所には6人のEAがいて、1,500の申告書を作成しているということで、申告は全て電子申告で行っており、電子申告については、専任者を一人おいて任せているとの こと。申告業務がほとんどなので、申告時期には1週間に100時間程働いているけれども、それ以外の時期は週に30時間位働いているということです。
③ IRS退職後、CPAや弁護士等のプロを顧客として高度な業務を行っているEAであ るフランシス ズニーカさんの場合
IRS勤務時代に移転価格税制などの国際税務を専門にしてきたという経験を生かして、高度な業務を行っておられます。IRS勤務時代は、日本の自動車業界にとっては厳しい相手であったようですが、今は心強い見方になって下さるそうですよ。弁護士と組んで仕事をすることも多く、裁判用の資料を作ったり、証言したりもするそうです。(通訳もして下さったCPAである長島信男氏のお話では、EAの中でこのズニーガさんや次のキノさんのように高度な業務をしているEAの数は、はっきり言って少ないとのことですが。)
④ IRS退職後、EA登録をし、先の長島氏の事務所に所属しているが、自分の顧客も 持つ。スタンリー・キノ 氏の場合
ファイリングシーズン(2月~5月)だけ税務申告書を作っているそうで、年金があるので、そんなに働く必要はないということで、税務相談や顧客の代理人としてIRSに出向くこともあり、IRSと争うチャレンジが楽しいというキノ氏です。IRSの内部情報をもらったりして仕事に役立てているそうで、何だかどこかの国にも似ている感じがしました。
EA協会役員と昼食会
(小出 絹恵 担当)