バラダット・タックス・サービス氏講演

１．はじめに

カリフォルニア州北部の大都市サンフランシスコから 更に北に上った閑静な都市サクラメントにEAのバラダット氏が経営する事務所「バラダット・タックス・サ－ ビス」があった。当事務所訪問の前に同じサクラメント市にあるカリフォニアEA協会への訪問があり、またその後の昼食会を通しても、EAの方々が皆それぞれ独自の業務展開をしており、一概にEAの業務の一般論はとても描けないことに気が付いた。そのことは他のレポ－トからも容易に理解されると思われる。したがって本レポ－トもバラダット氏の事務所はこうであったとの括弧つきのものである。
ところで、バラダット氏はカリフォルニアＥＡ協会の元会長であり、その肩書きから厳めしい人との先入感を持っていたが、屈託の無い話し振りは陽気なアメリカンであったが、通訳を介しての１時間強の訪問時間との制約もあり、十分な情報を得たとも云い難いものがある。

２．個人事務所を開設するまでの経緯

個人所得税の申告代理業務では、全米規模で事業展開をしているH＆Rブロック社がよく知られた存在であるが、バラダットご夫妻（ご両人ともEA）もそこの出身であった。南カリフォルニアで四店舗をフランチャイズ制のもとに経営をしていたとのことである。H＆Rブロック社は直属店経営（例えばサンフランシスコ・サクラメントはすべて）とフランチャイズ制による経営との両方式を採っている。EAの存在に疎い納税者にとっても、H&Rブロック社はその強力な広告宣伝力により知名度が高い。

３．「バラダット・タックス・サ－ビス」の業務

バラダット氏によれば、一般的にはEA事務所の主要業務は以下のようである。

1. 税務業務
2. 記帳代行業務（月次の財務諸表作成を含む）
3. 投資相談業務
4. 内国歳入庁との折衝業務
5. 給与計算業務

「バラダット・タックス・サ－ビス」では1の税務業務及び4の課税庁との折衝業務のみを行っている。
ところで、ミセス・バラダットは同じ家屋内の別のEA事務所を任されているが、そこでは記帳代行業務および投資相談業務も行っているとのことであった。投資相談業務については担当者との面接の機会が無くその明細は不明だが、記帳代行業務については以下のようであった。
パソコン（OSはDOS-Vで、ウィンドウズは今後導入予定）による会計ソフト（クイックブックは使いにくくアクセントを使用）を用い、３人の補助者を雇い、月150件をこなしている。事務所からクライアントに出向くことはなく、クライアントが小切手の耳や原始証憑を持参もしくは郵送し、事務所で仕訳作業から月次の財務諸表までを作成する。細かな情報のやり取りはＥ-Ｍａｉｌで行う。
記帳代行業務の将来については、パソコンソフトの普及は今後も進むが、ソフトを十分に使いこなせる法人個人は少なく、ソフトの運用指導も含めて記帳代行業務は減らないであろうとの意見であった。
バラダット・タックス・サ－ビスでの税務業務は個人所得税の申告作成業務が主力である。一方、個人所得税の申告代理業務のみのサ－ビスも行っており、これら申告書はすべて電子申告される。電子申告そのものには格別の料金請求はないが、毎年４０人から５０人の依頼者が電子申告による申告代理を委嘱するために事務所に訪れる。電子申告制度には、ラウシステムと呼ばれる還付制度があり、これは事務所と銀行が契約を結び、電子申告日のほぼ翌日には確認できる内国歳入庁からの承認によって、銀行が事務所に還付金額を提供し、事務所が依頼者に対して料金を差し引いた上で小切手を渡す制度であり、大変に便利なものであるとのことであった。子供の養育費や交通反則金の不払いがあると、郡（カウンティ）や弁護士からの通報によって、還付金額が差し押さえられるとのことで、米国の社会事情の一端を伺い見ることができる。遺言書の作成や信託の設定あるいは破産などに発生する税務業務も事務所の大きな柱であるが、これは二人の弁護士とチ－ムを組みそれぞれの得意分野で仕事をしているとの説明があった。
また、内国歳入庁との折衝業務では、現在４６０万ドルの税金滞納者の事案を抱えており、このネゴシエイションを行っている。
ところで、クライアントとの契約書は作成するが、これには２種類あり、１つは申告書作成に関するもの（申告書作成契約書）、もう１つは内国歳入庁に対する代理人であることのもの（代理権授与の契約書）であり、その紹介については翻訳したものを別掲しており、その契約書を読むと彼らの業務内容がより具体的に理解されると思う。

（二重作 誠一郎　担当）

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