2.わが国の課題

我国経済は、好不況の波はあったものの、戦後一貫して成長を遂げてきた。しかしながら、いわゆるバブル景気とその破綻を境として長期に亘り景気の後退局面が続き、法人税をはじめとする税収の落ち込みは甚だしく、国家財政に多大な影を落としている。他方、我国税制は、このような国家財政の肥大化、税収の落ち込みとともに、課税の公平性を貫くあまり、とみにその複雑さを増している。
こういった状況の中で、税理士の業務遂行に伴う賠償請求事件も増大し、もはや等閑視できない事態になっているといって良い。税理士の、いわゆる専門家職業賠償責任については、その専門家責任の性質や範囲、納税者の意識、徴税現場の実態等々から、問題の受け止め方が極めて多様となっており、帰趨に迷わざるを得ず、そのせいか訴訟に現れた事例を見ると、結果は総じて我々税理士に不利且つ深刻なものとなっている。
そこで、我々税理士にとってはもちろん、国家財政の健全化と公平性の維持確保のため、今後の問題解決に向けた指針を見出すべくアメリカに赴き、我国税制の模範となっている現地の実情を調査することとなったものである。

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