第8章 米国連結納税制度

東京税理士会 アメリカ調査研究視

日時:
2000年10月7日(土)11:00 ~ 12:00、13:15 ~ 17:00
場所:
The New Otani Hotel & Garden Los Angeles 2Fバンケットルーム
講師:
KPMG LLP パートナー デニス・マロイ(Dennis J. Malloy)
マネージングディレクター ナオコ・リャング(Naoko Leung)
シニア・マネージャー 古川武宏

【Ⅰ】Preface

1.連結納税と連結財務諸表との違い

(1)連結納税の目的

グループ法人の経済的一体性を重視し、グループ法人全体を一つの事業体(納税主体)とみなすことにより、税は企業の経済活動や経営意思決定に対して中立を保つ必要がある。
例えば社内の一部門を分社化し、又は新規子会社を設立した法人と、社内の事業部としてそのまま事業活動を行った法人との、税負担の水平的公平を目指すものである。

(2)連結財務諸表の目的

企業が子会社や関連会社を設立し事業活動を行っている場合、投資家や株主などの利害関係者へ適正な財務情報を提供するためには、親会社単独の財務諸表では不十分であり、グループとしての財政状態及び経営成績を測定するために、連結財務諸表が必要である。

(3)連結納税と連結財務諸表は関連があるか?

以上のように両者の目的とするところは全く関連がない。そのため同じ「連結」という言葉を使用するために紛らわしいきらいはあるが、両者は全くの別物である。
アメリカで連結納税制度が生まれたのは、超過利潤税という法人に対する税が累進税率であったため、分社化等による租税回避がおこなわれたのを原因とする。米国課税庁はこの租税回避を防止するため、グループ企業が経済的、実質的に一体であるならば、一個の企業として課税しようと連結納税制度を生み出したのである。
一方で連結財務諸表制度は、持株会社の発展により広がってきたものである。

この二つの制度はそれぞれの連結に含める範囲や、やり方もほとんどの場合関連がない。 したがってこれから初めて連結納税を勉強しようとする読者諸兄で、連結財務諸表に自信が無い方があっても、連結納税を理解する上では支障が無いのでご安心ください。
ただすでに連結財務諸表をご存知の方は、期末製品等に含まれる内部利益の算定という計算技法は連結納税でも使用するため、この部分は新たに覚える必要がありません。

連結納税制度とは、あくまでも法人税法の一部、又は一類型なのである。

※注
日本への連結納税制度の導入において最も重要なのは、連結加入時、連結納税申告時、連結離脱時の各段階において、グループ法人やその株主の課税逃れを許さず、またタックスシェルター等の課税の不公平を防止することである。

2.米国連結納税の歴史

1917年 第一次世界大戦超過利潤税が累進税率であったため、会社分割による高税率回避を阻止するため、規則によりIRS長官が必要に応じて強制適用。
1918年 法律により、連邦所得税にも強制適用。100%所有会社との連結。
1921年 連邦所得税において選択適用。超過利潤税廃止。
1924年 議決権の95%以上に変更。
1920年代後半 議決権の95%以上に変更。
1932年 付加税が適用。
1934年 不況により連結納税は原則廃止。
1940年 超過利潤税復活。超過利潤税に限り連結納税も復活。
1942年 連邦所得税にも再び連結納税適用。2%の付加税適用。
1954年 超過利潤税法との関連を廃止し、連邦所得税独自の規定とした。所有割合を80%以上に変更。連結租税債務配分方法として4つの選択方法。
1964年 2%の付加税を全面廃止。
1966年 グループ内各社、会計方法の統一強制を廃止。会社間取引による未実現損益、消去方式から、売り手側繰り延べ方式へ変更。欠損法人へ節税額を配分Regとなる。
1970年代初頭 法人売上ベースの40%以上が連結納税申告となった。
1976年 保険会社を一定条件の基連結の範囲に含める。
1984年 連結要件に株式時価総額80%以上を加える。
1990年代 法人売上ベースの60%以上が連結納税申告となった。
※注1
できるだけ多くの納税者が利用可能なように95%から80%へ変更された。
※注2
所有基準80%以上は、他の税法の規定(非課税解散、現物出資に関する圧縮記帳)と同様の取り扱いを図るためと思われる。
※注3
1964年に付加税が廃止された理由は、グループは同一の経済単位として活動するのであるから、そのグループ内に複数の法人が存するからといって、あえて付加税を課さねばならない根拠は無いから。
※注
付加税とは連結納税による法人税の税収減を補完するための制度だった。その仕組みは、ちょうど湾岸戦争の後日本で採用されていた『法人臨時特別税』のようなものである。
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