第8章 【6】税額の配分

【Ⅵ】税額の配分

1.税額の配分方法

結税額はグループ各社で負担する。親会社はグループ各社の代理人として納税事務を行うが、税負担はあくまでも個別法人であるため、グループ内の各法人への連結納税額の配分方法が問題になる。

連結納税額の配分方法に関しては、法律で強制をせず財務省規則に規定された方法のなかから各グループがいわば自治により配分方法を決定し、グループ法人間で契約を締結することが認められている。(タックスシェアリング アグリーメント)

この契約で決められた配分方法と違う金額を負担した場合には、その違う金額は『資本出資』『株式に係る分配』『その結合』として取り扱われる。具体例は後記3.参照。

規則に規定された配分方法は次のとおり。なお具体例は後記4.参照。

(1)
個別所得比例基準
連結租税債務を連結課税所得に対する各法人の連結課税所得の比で配分する。
グループ連結租税債務×当該メンバーの帰属課税所得÷全メンバーの課税所得合計
(2)
個別税額比例基準
各法人が連結納税ではなく、個別申告をした場合の税額の比で配分する。なお税額がマイナスの場合はゼロとし、欠損法人の節税額を配分の対象としない。
グループの連結租税債務×当該メンバーの個別申告租税債務
÷全メンバーの個別申告租税債務合計

(なお連結修正要素は次のとおり。)

ⅰ 未実現損益の繰延
ⅱ 棚卸資産修正
ⅲ メンバーの株式、社債、他の債券に関する取引
ⅳ 超過欠損金を益金参入
ⅴ 減価償却に関するグループ間取引の場合の修正
ⅵ メンバー間の配当控除を消去
ⅶ 価格 Reg1502-31 1502-32 利益 Reg 1502-33
ⅷ 投資税額控除

(3)
増加税額配分基準
各法人の個別申告税額より連結納税により配分された税額のほうが多い場合、その増加額を連結により税額が減少したメンバー法人へ比例的に配分する方法。
(4)
その他の承認された方法
欠損法人の欠損金の節税効果を欠損法人に配分する方法
Percentage Method
欠損が発生した年度に税額分を戻す方法
Wait & See Method
実際に欠損を使用する年度に税額分を戻す方法
注意

まとめると税額の連結グループ各社への分配方法は次のとおり。

①連結ベースでの所得を各社の所得割合に応じて按分する方法。
②グループ各社が個別申告した場合の税額割合に応じて按分する方法。
③①と②を組合わせて調整する方法
④税務当局の許可を得た方法。

2.負担額決定のプロセス

①タックス シェアリング アグリーメント(契約書)を結ぶ。
各社がどういう方法で税金を負担するかを契約により決める。これにより実務的には各社のキャッシュフローを管理する目的もある。
なお何も選択しなければ個別所得比例基準が法定方法となる。

注意
税額配分の方法は通常、実務では選択しない。したがって、原則的方法(個別所得比例基準)による税額配分が実務上はほとんどである。

②各社負担税額の決定
個別法人の税務利益積立金(E&P)を計算するため、いくらの税額を負担するか決定するのだが、実務では通常は上記タックスシェアリング アグリーメントとおりの税額配分及び負担を行う。
個別法人の税務利益積立金額の計算とは、投資簿価が現在いくらであるのか、その会社が連結グループから離脱する場合、子会社株式売却損益の管理をするために行う。

注意
タックスシェアリングアグリーメントと違う税額の負担を行えば、グループ内法人間での実質寄附金となる。これは非課税であるがグループ各社の利益積立金は増減するので、配当又は出資として投資修正の対象となる。具体例は次による。

3.投資及び配当の例示

税率30%と仮定 個別所得比例基準によるものとする。

(例1)税務利益積立金への『投資』の影響

親会社 子会社
課税所得(連結ベース) 100 200
税債務 30 60
支払税額 0 90

子会社が負担するべき60を親会社が負担した。この60は親会社が子会社へ投資したとして子会社株式の投資簿価を加算する。

(例2)税務利益積立金への『配当』の影響

親会社 子会社
課税所得(連結ベース) 100 200
税債務 30 60
支払税額 90 0

親会社が負担するべき30を子会社が負担した。この30は子会社が親会社へ配当したとして子会社株式の投資簿価を減算する。
連結納税上では子会社が親会社へ配当しても、連結税額は増加しない。

4.税額配分の例示

(例1)個別所得比例基準による具体例
連結ベースの課税所得
1,000
連結税額
350
個別所得比例基準の場合 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社
連結ベースでの各社の課税所得 600 900 △500
税額配分割合 40% 60% 0%
配分税額 140 210 0
(注)
欠損法人へは税額を配分しない。
(注)
個別所得比例基準以外の税額配分方法は連結グループが選択しなければ採用できない。
例2)個別税額比例基準による具体例
個別税額比例基準の場合 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社
各社の個別申告税額 250 200 0
税額配分割合 55% 45% 0%
配分税額 193 157 0

個別税額比例基準は、連結納税のための内部利益繰延手続きや連結のための各種調整項目をいっさい無視して、連結ではない純粋に個別申告だった場合の各社税額の割合により連結税額を配分する。アメリカでは州税のために、どちらにせよ個別申告ベースでの税額を算出しなければならない。そのため個別税額比例基準を採ったとしても余計な手間がかかるわけではない。

(例3)増加税額配分基準による具体例
増加税額配分基準の場合 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社
①所得比例基準による配分税額 157 193 0
②個別税額比例基準による配分税額 210 140 0
①-② △53 53 0
配分税額 157 193 0

増加税額配分基準の手続きは次のとおり。

所得比例基準による配分税額と個別税額比例基準による配分税額を比較する。
連結納税により税額が増加した法人の増加分を、連結納税により税額が減少した法人へ配分する。この時配分される税額の上限は、配分された法人の税額が個別申告をした場合の税額に達するまでである。
上記でまだ配分しきれない残額がある場合には、その残額を所得比例基準により各社へ再配分する。
その他の承認された方法(欠損法人の欠損金の節税効果を欠損法人に配分する方法)
(例4)欠損が発生した年度に税額分を戻す方法(Percentage Method)

税率34%と仮定、所得比例基準の場合

第1年度 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社 連結納税ベース
課税所得
税額
0
0
2,000
680
△1,000
△340
1,000
340
第2年度 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社 連結納税ベース
課税所得
調整前税額
0
0
1,000
340
3,000
1,020
4,000
1,360

(例5)実際に欠損を使用する年度に税額分を戻す方法(Wait & See Method)

その他の承認された方法(欠損法人の欠損金の節税効果を欠損法人に配分する方法)
(例4)欠損が発生した年度に税額分を戻す方法(Percentage Method)

税率34%と仮定、所得比例基準の場合

第1年度 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社 連結納税ベース
課税所得
税額
0
0
2,000
340
△1,000
0
1,000
340
第2年度 親会社P社 子会社S1社 子会社S2社 連結納税ベース
課税所得
調整前税額
課税額
調整後税額
0
0
1,000
340
340
680
3,000
2,020
△340
680
4,000
1,360

S2社は第1年度に欠損1,000があるため、個別申告なら第2年度の課税所得は2,000であり、税額は680だった。したがってこの差額分340を、この欠損を使用したS1社がS2社へ第2年度に支払う。

(注意)
受取側の処理
税効果分の現金を受取った法人側では次ぎの処理を行う
(借方)
現金 ×××  (貸方)タックスベネフィット
×××このタックスベネフィットは課税所得を構成しない。
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