参考Ⅱ KPMGが使用する契約書のフォーム
以下の契約書のフォームはKPMGの特別のご好意により所内で使用される Engagement Letter ("Professional Liability" KPMG LLP)の一部を公開していただいたものです。
1 連結または単一の法人税申告書等の作成に関する契約書(要旨)
提供するサービスの範囲
申告書及び付属明細書の作成 作成すべき申告書をすべてリストアップされる。
予定納税申告書
その他のサービス 移転価格税制にかんする検討をKPMGが担当していない場合は特
に記載事項が挿入される。
税務コンサルテイングサービス
報酬
本契約の報酬は、扱う事柄の複雑さ、そのサービスの担当者より請求される時間数に基づいて請求します。両者の話し合いの結果として、税務関係のサービスの報酬は、すべての情報を、 月 日までに受け取ることができるものとして、$ から$ までの範囲となります。もしも税務申告に必要な情報を 月 日までに受け取ることが出来ない場合、申告期限間近に申告書を作成する場合はコストが増加しますから、$ から$ までの範囲になります。
サービスの提供を行っている期間中に、追加の時間数または追加の費用が確実に発生するような情勢により、上記の見積もりの範囲内で実行できない場合があります。
その場合には、その情勢について貴方に通知するよう努力します。
「なお、私共は見積もり報酬の20%を超えない現金支払いの費用(out of pocket expenses)を請求します。それらの費用には旅費、宿泊、食事代、電話代、ビデオ会議費用、文書作成代、写真代及び管理費を含みます。」
報酬は仕事の進行状況に従って会社に請求します。「本契約の報酬は、次のように進行に従って請求します。」
第1回請求日 $
第2回 〃 $
第3回 〃 $
回数は適宜増やすことが出来る。
この契約書に添付される標準的契約と条件(Standard Terms and Conditions)は本契約の一部を構成します。両者の同意を確認するため、この同封した契約書のコピーに サインをして30日以内に返送してください。
※ なお、契約書の一部を構成する標準的契約と条件(Standard Terms and Conditoins)については全文を添付した。
標準的契約と条件は以下の通りである。
[KPMG LLP Standard Terms and Conditions Tax Engagements]
税務関係契約書の標準的条件(スタンダード タームズ アンド コンデイションズ)(全文)
1.範囲
KPMGは条件が添付された契約書に特定されたサ-ビスに限って義務を負う。もしも、KPMGがこの契約書の範囲を超えた争いや状況に遭遇した場合には、それらの状況が発生時に、クライアントに通知し、クライアントの事前の承諾なしに追加の費用が生じないようにします。明確に準備されない場合,KPM Gのサービスは、IRSまたは他の税金または歳入の当局によって異議があった場合に、クライアントの代理を行うことを含んでおりません。
2.期間
この契約書はサインされた契約書をKPMGが受け取ったときに有効とされる。この契約の期間に従って契約がより早く終了されない場合は、KPMGのサー ビスが完了した時点で契約は終了となる。本契約は両者のうち一方が書面にて他の者に通知をした場合にはいつでも契約を終了させることが出来る。 もしも,契約書がタックス プランニングの内容を含んでいる場合には、潜在的に期待される利益が法律上,規則上,または他の行政上の変更、または判決、 またはそれらの組み合わせの為に、もはや達成できない場合に本契約書におけるKPMGに対する唯一のクライアントの救済方法は、法律の制定日,規則ま たは他の行政上の指導の公布日または判決の日において請求日が到来していないKPMGの報酬の額について、クライアントは支払の義務を免除されること のみに限定される。本契約の期間中いつでも他の理由でこの契約を継続することがクライアントにとってよい利害関係にならないと判断した場合には、クライアントはKPMGに対してその趣旨を通知することができる。そのような通知があった場合、クライアントはKPMGに対し契約の開始時に支払った報酬 に加えて通知の日までの作業時間について標準の時間レートで支払うこと、および同日までに実際にかかった費用を支払うことに同意する。
3.請求書の支払い
クライアントは契約書の条件を受け入れることにより、KPMGに対するすべての請求書を受け取り後30日以内に支払うことに同意する。
4.協力
クライアントはKPMGのサービスを行う場合に、制限をつけることなく、KPMGに対し,クライアントに関するデータ,情報、職員へのアクセスを提供して協力するものとする。クライアントはKPMGのサービス履行の目的のために行う使用人や代理店の行為に責任を持つこととし、かつKPMGのサービス履行の目的の為に、用意されたすべてのデータ及び情報の正確性と完全性にも責任を持つものとする。
5.情報の信頼性/政府当局
KPMGは、結論をクライアントが提出した事実および仮定にもとづいて行い、独自に、この情報の確認はしないものとする。クライアントが提供する情報が、不正確または不完全である場合KPMGの結論に大きな影響を及ぼすことがあります。KPMGはその助言の解釈について例をあげると1986年制定の内国歳入法,関連した州の法令、その規則および司法と行政上の解釈についてのApplicable Provisions(適用される規定)を考慮することが出来ます。これらの関係当局は、変更が多く、遡及することもありそして、或いは将来にまで及ぶこともありその変更がKPMGの助言の正当性に影響を及ぼすこともあります。クライアントが別個にKPMGとそのような変更や修正の後もそうすることを契約しない場合には,その後の法令,規則,または司法および行政の解釈についての助言を最新のものにすることはしません。
6.Federal Confidential Communications Privilege (守秘特権)
内国歳入法7525におけるconfidentiality privilege(守秘特権)は、本契約により連邦税に関する助言を行う場合の、KPMGの職員とクライアント間の一定のコミュニケ―ションに適用されます。KPMGを雇うことにより,クライアントは、クライアントが書面により守秘特権を放棄するまでは、KPMGがクライアントのため、守秘特権の適用のあるコミュニケーションについて、訴訟になった場合に同特権を主張することに同意する。内国歳入庁または他の第三者が、KPMGの行った税に対する助言の情報もしくはそれらの資料を要求してきた場合、それを内国歳入庁または第三者に開示することが守秘特権の放棄となることがあるので、クライアントは、その旨をKPMGに通知しなければならない。特権が認められている情報は、監査のクライアントが財務諸表を作成する際、および監査人としてのKPMGが財務諸表の監査をする際にに使われる。法令は監査チームのメンバーに対し、税務サービスをふくむ監査以外のサービスを担当している事務所職員と、監査に影響する可能性のある事柄について検討することを要求している。内国歳入庁はそのような使い方およびコミュニケーションは特権の放棄となるとの見解をもっています。本合意書を遂行することによって,クライアントは(もしもKPMGのひとつの監査クライアントであっても)この可能性を知り、監査の仕事をするに際し法令により要求されるときは,その情報をKPMGが使用することを認めるものとする。クライアントは特権が、もしも特別の情報に対しては適用がないと決定された場合にはKPMGは表明,保証または約束をしないこと、そして情報のconfidentiality privilege(守秘特権)の適合性について意見を申し出ないことを理解し、そして特定のコミュニケーションにつき特権の適用がなかったとしてもKPMGに害意を持たないことに同意する。クライアントはKPMGに対し、クライアントの利益のためconfidential privilege(守秘特権)を訴訟によって主張する際に、KPMGによって支払われた弁護士費用,その他の費用,実費を弁償することに同意する。
7.マネジメント責任
クライアントとKPMGの関係が監査の独立を要求する範囲では,KPMGは独自の判断で、適用される監査人の、独立性の規則のもとで、その独立性が損なわれると判断されるような仕事や任務を要求されるべきでないし、また引きうけてはならない。そのような規則は米国CPA協会、SEC、ISB、州会計委員会,その他KPMGの所轄の行政当局および同様に時折変更されるKPMGの専門家としての仕事の ポリシーによって定義され解釈されます。KPMGは本契約によってクライアントに対し、いかなる管理機能の仕事も行うことはなく、また管理上の意思決定も行うこともしない。クライアントは本契約によって、クライアントの責任が以下のことを含むことを理解し,同意するものとする:1.提供されるサービスを監督する任務に当たる管理者レベルの人員を1名または数 名を指名すること。2.おこなわれたサ―ビスおよびその結果の判定の妥当性を検討すること。3.サービスの結果に対する責任を受け入れることを含んだ管理上の決定を行うこと および 4.進行中の仕事を含んだ内部統制を確立し,維持すること。
8 開示および使用の制限
本契約が、KPMGによって提案されたTemporary Treasury Regulation section 301.6111-2T(c)により直接または間接的に法人関係者の連邦税の減少または繰り延べを計画する戦略に関するものである場合には,クライアントは何の制限も無しに速やかに、関係者に対して戦略のそれぞれのかかわりのある部分を、公開することが認められる。クライアントに対しKPMGが提供した書面による助言はクライアントのための情報でありクライアントが使用できるものであり、KPMGの速やかな書面による許可なしに、第三者により利用されては、ならないものとする。
9.債務および損害賠償金の限度
本契約によるサービスに関し理由のいかんにかかわらず生じた、KPMGのクライアントに対する債務の限度はこれらのサービスに対して支払われた報酬を限度とします。本契約によるサービスに関して、第三者による損害賠償請求の場合には、KPMG社員の意図的または故意の誤った行為によるものと判断された場合を除き、クライアントはKPMGおよびその社員のすべての請求,債務、コストおよび費用を補償するものとします。
10.法律相談
KPMGが提供する税務の助言に関し税金以外の法律面の事柄についてクライアントは助言およびそれに関連する法律上の書類そして或いは合意書の草案を、目的として法律相談を受け、そして/または、法律相談の契約をするものとします。KPMGはそのような書類および或いは合意書の草案を作るためにクライアントの法律相談に必要と考えられる税金関係の助言をクライアントの法律相談に対し提供します。法律相談または他の専門家サービスの提供者が必要な場合,クライアントは,そのようなサービス提供者に対し契約し,費用を支払う責任があります。
11.独立した契約者
両者は独立した契約者であり、いずれのものも現在及び将来にわたり他者の代理店,代表人,パートナー、またはジョイントベンチャラーではないことを理解し合意する。両者は直接にまたは示唆により他の一方の代理人として行動してはならないし,どのような形にしても他人の代理人として債務を引き継ぎまたは新たに債務を作ってはならない。
12.完全合意事項
この標準条件が添付され証拠書類を含んだ契約書は、KPMGとクライアント両者との本件に関する契約のすべての合意であり、この契約に関する他のすべての口頭および書面による表明、合意または契約にとって代わるものである。
13.準拠法
この標準条件が添付される契約書はニューヨーク州の法律に準拠し,ニューヨーク州 に従って解釈される。
2 法人に対する税務相談の契約書(要旨)
範囲 | 一般または特定のプロジェクト |
---|---|
報酬 | 本契約の報酬は、サービスの複雑さ、サービスを行う人について請求される時間数によります。話し合いの結果、報酬を $から $までの間と見積もりました。このサービスを実行する間に追加の時間や費用がかかり、見積もり金額以内で完成できないと見込まれる場合があります。その場合は通知をするものとする。「見積報酬額の20%を超えない範囲でout of pocket expenses(現金で支払った費用)を請求できます。費用には旅費、宿泊費、食事代、電話代、ビデオ会議、文書代、作表代、及び管理雑費を含みます。」 |
報酬の請求は、作業の進行に従って請求します。
第1回 請 求 $
第2回 〃 $
第3回 〃 $
必要があれば回数を増やす
この契約書に添付される標準的契約と条件(Standard Terms and Conditions)
本契約書の一部を構成します。両者の合意を確認するため、同封した契約書のコピーにサインをして返送してください。
3 個人所得税申告書作成契約書 報酬総額1万ドル以下の報酬の場合(要旨)
サービスの内容
税務申告業務 連邦税および州税の確定申告
予定申告
申告書作成に必要な情報が集められるようにオルガナイザー(organizer)をお渡します。必要なすべての情報を集めて出来るだけ早く返送してください。情報のうち、入手が遅れるものがあれば出来る限り必要な情報を集めてオルガナイザーを完成させ、何の情報が不足しているかを明記して下さい。
私共が、20 年4月1日までにすべての情報を受け取ることが出来ない場合、申告書の提出期限延長の届を準備します。申告書について調査があった場合に、貴方が希望するならば、手助けをしたり貴方の代理をすることも出来ます。申告書作成の報酬はそのような追加のサービスは含まれていません。
税務相談サービス この契約書は、貴方からの書面または口頭の税務相談のサービスを含んでいます。大きな相談は別契約です。
報酬 この契約書の報酬は複雑の程度と、サービスを行う担当者について請求される時間にもとづきます。
貴方との話し合いの結果、税務申告サービスの報酬は、全部の情報が 月 日までに受け取ることが出来れば、見積り額は$ から$ までの範囲になります。情報が 日までに用意出来ない場合、申告期限近くの申告書の作成はコストがかかるので$ から$ の範囲になります。このサービスの実行中に、追加の時間や費用がかかる状況が発生することがあります。そのような状況については貴方に通知します。
現金で支払った費用(Out of pocket expenses)を見積り報酬の20%の範囲内で請求します。
添付された標準的契約及び条件Standard Terms and Conditions(1に記載したものと同じ)は、本契約書の一部となっています。貴方の完成されたオルガナイザーと、そして/または税に関するデータを、私共が受け取った時点で、私共は貴方がこの契約を受け入れたものと考えます。(注 クライアントは契約書のコピーにサインをして返送する 必要がない。〉
4 個人所得税申告書作成契約書 報酬総額が一万ドルを超える場合(要旨)
内容 前出の契約書と同じ
報酬 前出の契約書と同じ
添付されたStandard Terms and Conditions 標準的契約及び条件(1に記載したものと同じ)は本契約書の一部を構成します。
両者の合意を確認するために、契約書のコピーにサインをして30日以内に返送して下さい。なお契約書の内容がジョイント・リターンの作成である場合、夫婦二人各々サインをして下さい。
5 パートナーシップ税務申告作成契約書(要旨)
内容
サービスの範囲
連邦税及び付属の明細書、「州税」
口頭または文書による税務相談、大きな相談は別契約とします。報酬、複雑さおよびサービスを行う者について請求される時間にもとづきます。両者で検討の結果報酬は、すべての情報が 月 日までに受取った場合 $ から$ の範囲とします。月 日までに申告に必要なすべての情報が受け取れない場合申告期限近くのサービスはコストが増加するため、$ から$ の範囲になります。このサービスの実行中に、追加の時間や費用がかかる状況が発生することがあります。そのような状況については貴方に通知します。「現金で支払った費用(out of pocket expenses )を見積り報酬の20%を超えない範囲で請求出来ます。費用には旅費、宿泊費、食事代、電話代、ビデオ会議、文書作成費、作図代及び管理雑費を含みます。」
報酬の請求は、作業の進行に従って請求します。
第1回 $
第2回 $
第3回 $
必要な場合回数を増やす。この契約書に添付される標準的契約と条件Standard Terms and Conditions(1に記載したものと同じ)は、本契約の一部を構成します。両者の合意を確認するため、同封した契約書のコピーにサインをして30日以内に返送してください。(以上 仮訳)
6.その他の契約書
クライアントがKPMGから他の会計事務所に代わるとき、次の会計事務所が今までの申告書のコピーやワーク・ペーパー(作成の資料)の提供を希望してきた場合どのような 手紙を送るのか。
- クライアント宛 後継事務所に書類を送ることの通知
- 後継事務所宛書類を送るに際しての注意書をつける。ワーク・ペーパーが他の目的使用されたり、それにより訴訟をされないよう手紙に記載する。
- 後継事務所宛書類を実際に送る場合に添付。
1、2及び3いずれも相手から承認のサインをもらうことになっている。
※記1から5の契約書の翻訳については、著作権者の了解を得るようにしたが、それは本報告書を作成するためであり、書籍を出版するために著作権者の了解を得たものではない。そのため、本報告書の日本文を引用するときには、原典を確認するとともに、翻訳者の了解を得て、ご自分の責任でもってお願いします。また翻訳文を有料にて出版することについては、著作権者の許可を受けておらず、許可を要することをご承知おき下さい。
(高屋 千鶴子 担当)