Ⅰ.米国税務専門家制度の紹介
米国税務専門家調査研究視察報告書の前提となる米国税務専門家制度の概要を紹介する。 米国の税務専門家の意義については、財務省規則に定められているので、その内容の概要及びその条項を紹介する。注1
1.IRSに対する業務(Sec.10.2)
IRSに対する「業務」(Practice)は、IRSに対する「表示行為」(presentations)或は税法上の納税者の権利、義務について税務官吏に対する「表示行為」(presentations)に関連するすべての事項を包含する。これらの「表示行為」(presentations)には、申告書類等の作成、提出、IRSとの応答・連絡、不服申立(協議conferences、聴聞hearings、面会meetings)等の依頼人に対する代理等を含むとされている。業務行為者(Practitioner)は、弁護士、公認会計士、登録代理人、登録保険数理人の個人資格者をいう。
2.業務を行い得る者(Sec.10.3、10.7)
無制限業務行為者
- 弁護士、公認会計士資格証明書、代理権限を証する書類をIRSに提出することを要す。
-
登録代理人(Enrolled agents)
- IRS試験の合格者
- IRS職員の試験免除
- 登録保険数理人
制限業務行為者
-
その他の者
業務行為者(Practitioner)でない個人が納税者を代理する場合には、納税者と同道しなくとも、納税者からの代理権限を証する書類を要する。以下の者は、業務行為者(Practitioner)と異なり、その業務範囲は制限(Limited practice)されている。(Sec.10.7)- 近親者の代理人
- 被用者が雇用主のために行う業務
- 政府職員が職務上行う業務
- 納税者のために申告書を作成し、申告書作成者(preparer)として署名した者或は申告書作成者(preparer)として署名しないが申告書を作成した者が税務署の調査官に対して、納税者の代理人として出頭することができる。
- その他業務管理官注2が特に認めて権限を付与した者
- 申告書の作成と情報の提供
いかなる者も申告書を作成し、IRSに納税者のための証人として出頭し、IRSの求めに応じて情報を提供すること。但し、10.34の(a)行動規準にしたがって、申告書の作成と情報の提供を行う。
以上の財務省規則の定めから、業務行為者(Practitioner)である弁護士、公認会計士、登録代理人、登録保険数理人の個人資格者が資格に基づき独占的に行うことができる業務は、IRSに対する「表示行為」(Presentation)のうち、単なる申告書の作成、証人としての出頭、IRSへの情報の提示(Sec.10.7)、調査部門以外の徴収部門等への「表示行為」(Presentation)である。具体的には、納税者の代理人としての税法解釈に基づく協議・主張・異議申立等の不服申立・徴収手続等に関する納税者の代理である。
3.IRSに対する業務に関する義務と制限
- 業務行為者の情報の提供義務(Sec.10.20)
- 業務行為者の納税者の懈怠に対する助言(Sec.10.21)
- 業務行為者の正確性の履行(Sec.10.22)
申告書等、証言等の正確性の履行 - 業務行為者の迅速処理(Sec.10.23) IRSに対する事項の迅速処理
- 業務行為者の資格剥奪、資格停止処分を受けた者、IRSの元職員からの援助の制限(Sec10.24)
- 業務行為者の政府職員のパートナーとしての業務の禁止(Sec.10.25)
- 元政府職員、そのパートナー、その協業者の業務の制限(Sec10.26)
- 公証人の業務の制限(Sec.10.27)
-
報酬(Sec.10.28)
- IRSに関する事案について納税者を代理するための法外な報酬請求の禁止。
- 申告書作成のための成功報酬の禁止。但し、増額申告書等の見直しのための成功報酬は許容される。
- 利益相反の禁止(Sec.10.29)
但し、情報開示による同意を除く。 -
業務の懇請の制限(Sec.10.30)
- 不当広告の禁止等と公認会計士等の仕事の勧誘の禁止。
-
報酬情報の開示
- 特定のルーティン業務に対する固定料金
- 時間当たり料金
- 特殊業務の料金
- 最初の相談料
料金表の公表、30日間の料金拘束
- 通信
通信媒体は、電話、メール、ラジオ、テレビ等。ラジオ・テレビ広報は、事前記録要件と放送記録の保存要件。ダイレクトメールの保存要件。保存期間は三年。 - 不適当な協同業務
規則違反にあたる顧客の獲得をした者との共同事業、報酬の分配等の禁止。
- 納税者の税金還付小切手の裏書き譲渡の禁止(Sec.10.31)
- 法律業務(Sec.10.32)
本規則は、法曹資格のない者に法律業務を行う権を付与するものではない。 - タックスシェルターの意見についての注意義務(Sec.10.33)
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申告に関する助言のための規準(Sec.10.34)
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行動規準
- 実在可能性規準
- ペナルティーの助言
- 依頼者から提供された情報に基づく業務
- 懲戒規準故意による行動規準違反等は、IRS業務の禁止。
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行動規準
※注1 財務省通牒230号(Code of Federal regulations part10)
※注2 IRSのAppeals部門の中にある。