Ⅲ. 日本の税務援助制度の現状と税務援助への新しい対応
(1)日本の税務援助制度の現状
わが国における給与所得者は、年末調整によって所得税額の精算が行われることにより、特別の場合を除き、確定申告の必要はありません。米国においては、給与所得者は会社等により所得税の源泉徴収をされますが、年末調整の制度がないので、一定の所得水準を超える所得があった者は、翌年4月15日までに確定申告書を提出して所得税の精算をすることになっている。
さて、わが国でも、サラリーマンの年末調整を廃止して、確定申告へ移行することが議論されるようになってきました。また、東京税理士会では、サラリーマンの確定申告権への対応として、年末調整で済ましているサラリーマンの権利を回復し納税者意識を高めるよう、申告納税方式との選択制を提言しており、これを担保する新しいサラリーマン自書申告支援システムを提起し、構築すべきであるとしている。
(2)税務援助制度への新しい対応
税理士法第49条の2第2項第八号の「税務援助」(以下「法定援助」という。)は、小規模事業所得者を対象としておりその対象者の基準が、前年分所得金額(専従者控除前または青色特典控除前)300万円を上限としている。
この法定援助対象者のうち援助応募者はきわめて少数であり固定化されてきている。
近年、法定援助対象者以外の者(以下、任意来所者という)が、税務援助会場に来所し援助ないし相談を受けるケースが増加し、この任意来所者割合は約96%にもなる。
現在の税理士会の法定援助では、給与所得者や年金所得者を正規の援助対象者としておらず、これらの者が税務申告をする場合、専門家からの援助を求めているにもかかわらず、対象外となっている。
しかしながら現実は、相談会場では小規模事業者を対象とする法定援助を建前としつつ、圧倒的多数の任意来所者の相談処理を行っているという矛盾の中にある。
こうした現況の中、昨年5月東京税理士会常務理事会では、「税務援助」への新しい対応として、「今後益々増えてくる市民生活に密着した業務に対して、税理士の職能を生かし、タックス・エイドとして組織的に対応し、新しい時代の到来にむけた法定援助とは別の社会的貢献業務への取り組みも視野に入れていきたい。」と提案している。