Ⅳ. 終わりに

平成12年10月4日から平成12年10月12日までの9日間にわたり、七テーマを課題に米国調査研究視察を行った。
米国の税務援助制度に関しての資料は日本になく、IRSホームページで検索したり、EA協会で資料をいただいたり、EAの方のレクチャーを伺ったりして、本稿をまとめあげた。
米国では、給与所得者については、年末調整制度がなく、全員申告することとなっている。
また、納税申告は、本人が申告するが、それが出来ない者は報酬を払い、他の者に依頼することになる。この依頼される者は、多くはCPAであるが、その他に人数が少ないがEAがおり、営利法人もある。日本では税務代理申告は税理士の独占業務となっているが、アメリカ合衆国は日本と違い、資格のない人でも報酬を得て税務申告書の作成を行うことができる。(ただし、税務代理業務はできないことになっている。)そのためH&RBROCK社のような法人も税務申告書代理作成業務を行っている。

米国の会計ビジネスにおける職業専門家数は、次のとおりである。

米国 日本
公認会計士 330,000人(AICPA加入者) 13,000人
税理士   65,000人
弁護士 900,000人 17,000人
EA(Enrolled Agent) 35,000人
その他公的資格者以外の者 例;H&RBrock社

また、米国における申告納税者数は、資料3であり、一方、日本の納税者数は、資料2となっている。

年末調整制度がわが国で廃止された場合には、確定申告者の大幅な増加と、税理士等の絶対数の不足は深刻なものとなってくると予想される。
米国においては、IRS(国家)が、主体となってプログラムを構築し、ボランティアの力により、低所得者や高齢者を援助していることがわかってきた。
あるEAの事務所では、確定申告時期には5~6人のスタッフで、1,400件もの件数をこなすとのことです。このように大量に件数をこなせるのは、納税者側の確定申告資料の整理、確定申告書の作成の容易性等、長年のノウハウの蓄積等があると思われる。
年末調整制度を廃止して確定申告制度へ移行する場合には、納税申告者の大幅な増加に伴い、職業会計人の増員が必要不可欠のものとなり、現在の税理士制度、税務援助制度の見直しも余儀なくされるであろう。国が主体となってプログラムを構築し、国が行うべきこと、税理士会が行うべきこと、さらに新しい援助団体を加えた税務援助制度を再構築するか、どのように対応していくかの検討が、今後必要となってくるであろう。
この場合、この報告書で紹介した米国の税務援助制度がその参考になると考えられる。

(山口 賢一 担当)


バラダッド事務所において説明を聞く団員

講師スタンリー・キノ氏を囲んで
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